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 今回は主としてエンターテインメントを紹介します。

 先ずは松本清張「かげろう絵図」(清張全集第25巻)(文芸春秋、1972)は徳川第12代将軍家慶にあっても大御所として幕政の実権を握っていた11代将軍家斉治世における江戸城大奥を舞台とした時代劇ミステリーと言えましょう。実在の人物とフィクションが混在するものの、平戸藩主松浦静山の「甲子夜話」や「半七捕物帳」の岡本綺堂の文章を採りいれるなど、清張らしい時代考証がなされています。だから読者を「妖しげなる」大奥の世界にタイムスリップさせてくれるでしょう。ちょっと量はありますが、私は先日寝台特急「サンライズいずも」の中で一気に読み終えました。お蔭で寝不足となったことを補足します。

 同じ時代小説である宮部みゆき「あんじゅう」(中央公論社、2010)は一味違う語り口でこれまた楽しい。私自身はファンタジーというジャンルを理解していませんが、ここに展開される幾つかの物語がこれに当たるのだろうと思います。本書のタイトルとなっている「あんじゅう」と宮崎駿の「となりのトトロ」に登場する「まっくろくろすけ」との類似点を見付けました。

 現代作品は逢坂剛「配達される女」(集英社、2000)を読みました。フラメンコ・ギターを得意とすることでも有名なこの人はスペインを舞台とする「カディスの赤い星」(直木賞受賞)や「コルドバの女豹」で知られる一方、私が今回初めて手にした本書のように日本の警察小説シリーズもあります。実はこれを知ったきっかけは美術史家で大原美術館長である高階秀爾さんの「本の遠近法」(新書館、2006)で紹介されていることによります。意外性で知り得た一冊であるが、同級生でありながら警察の階級が異なる2人の男と女性刑事が繰り広げるドタバタであるもののにやりと読める。因に逢坂さんは私と同い年。先日のNHKBS2「週刊ブックレビュー」に登場していましたが、これまた私と同様禿頭で元気を振りまいていました。

 最後は筒井康隆「漂流」(朝日新聞出版、2011)朝日新聞日曜読書欄の連載をまとめた、いわば筒井さんの読書歴です。これらの本を読んだからSF作家になった訳でもないでしょうが、私も読んだ漱石やカフカ「審判」から三島由紀夫「禁色」、阿佐田哲也「麻雀放浪記」、その他名前も作品も知らない多くの本が出て来るので、また読んでみようかなと誘われます。先の高階さんの本とともに彼の頭の中身を見るようでありました。
                                   

宍道 勉

 

コメント(1)

  1. 堀江一夫 | 2011年2月19日 11:37

    宍道先生から紹介のあった、筒井康隆「漂流:本から本へ」の著者への
    インタビュー記事が「一冊の本・2月号」に掲載されています。
    曽田文庫に持って行きましたので、併せてご覧下さい。
    応援団員/堀江

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