新着情報

加藤周一「ある晴れた日に」(岩波現代文庫、2009)

  著者は文明批評などの文筆活動の傍ら、晩年はご存知の「九条の会」主催に
  見る通り、日本の社会を一貫して糾弾する姿勢を生涯通し続けた人である。
  また「知」に対する旺盛心は「世界大百科事典(平凡社)」の監修者としての
  「序文」に見ることが出来る(是非読んでもらいたい)。私が最初に出会ったのは
  昭和41年(1966)、島根大学を卒業し大阪の一金融マン時代で、現在休刊の
  「朝日ジャーナル」に連載の「羊の歌」(後に「続」とともに岩波新書として出版)
  である。この「自伝」風エセーに感銘を受けてから今日まで、私が最も尊敬して
  已まない人である。

  本書は1950年に初めて発表された長編小説で、タイトルは12月16日と8月15日、
  この日本の運命の日が「晴れた日」であったことを意味している。当時国民が
  恐れた憲兵や学校の軍事訓練の横暴さ、空襲における人間行動の克明な表現は
  鳥肌が立つ。その中で現在は忘れられたというより、何だか触れることが憚られる
  「天皇制」や「軍国主義」を真っ向から批判している。とはいえ文体は小説家のそれ
  ではないものの、加藤さん自身を思わせる若い医者の恋愛を絡ませ、人間とは
  何かを追求していると、私は読んだ。

  2008年、89歳の天寿を全うされたがまだまだ長く生きて多くの仕事をして欲しかった。

宍道 勉
 

コメントする

トラックバック(0)

:
« 前のメッセージ
「かかわり方のまなびかた」
次のメッセージ »
盛大に総会を開催

△このページの先頭へ